知っておきたい腰痛の基礎知識①

腰痛は臨床で頻繁に遭遇する症状ですが、その定義や分類、画像診断との関連について正確に理解しているでしょうか?本記事では、腰痛の基本的な定義から有病率、主要な原因、そして画像所見との関係について解説します。腰痛の理解を向上させるために、ぜひ参考にしてください。

腰痛とは?

腰部を主体とした痛みや張りなどの不快感といった症状の総称

体幹後面、第12肋骨と殿溝下端の間にある、継続する痛み

片側、両側の下肢に放散する痛みは問わない

坐骨神経痛などのしびれ・下肢症状を伴う場合を含む

(腰痛診療ガイドライン2019より引用)

腰痛の有病率

一生の内に腰痛を経験する割合は約83.5%(男性82.4%、女性84.5%)

40歳以上の人の腰痛の有病率は38%(推定2770万人)

治療が必要な腰痛を経験した割合は

 20代:男性19.4%、女性15.8%

 30代:男性36.3%、女性35.4%

 40代:男性50.6%、女性47.2%

 50代:男性52.7%、女性52.0%

 60代:男性52.4%、女性48.1%

 70代:男性44.1%、女性42.4%   (腰痛に関する全国調査2023より引用)

腰痛でお悩みの方が多いことがわかりますね!

腰痛の原因

脊椎:脊柱構成体の退行性病変(加齢による椎間板、椎間関節の変形・変性など)、骨折

神経:下肢神経症状を併発する疾患(脊柱管狭窄症など)、神経絞扼

筋肉:肉離れ、筋肉への過負荷、筋の張り、筋膜

内臓:内臓からの関連痛(内臓の痛みを背中で感じる)

その他:がん、感染、婦人科系疾患、心因性(メンタル)など

(腰痛診療ガイドライン2019より引用)

理学療法では脊椎・神経・筋肉が治療対象となることが多い

腰痛の分類 ~発症時期~

急性腰痛(発症から4週間未満)

亜急性腰痛(4週間以上3か月未満)

慢性腰痛(3か月以上)

亜急性・慢性腰痛はリハビリ(理学療法)が必要になることが多い

腰痛の分類 ~原因~

以前は特異的腰痛15%、非特異的腰痛(85%)と言われていた

※特異的腰痛は腰痛の原因が特定できる、非特異的腰痛は腰痛の原因が特定できない腰痛を指す

しかし、2016年の論文では腰痛の原因は

椎間関節 22%

筋筋膜性 18%

椎間板性 13%

脊柱管狭窄症 11%

椎間板ヘルニア 7%

仙腸関節 6%

原因不明 22%(非特異的腰痛)となっており、精密に検査をすることで腰痛の原因の75%は特定できると報告されている         

(腰椎診療ガイドライン2019、Suzuki H et al. PLoS One 2016)

画像異常と症状との関係

画像所見(レントゲン、CT、MRI)と症状は一致しないことも多い

腰痛のない人(約30000人)の画像所見の割合は下図のように報告されている

(Brinjikji W et al. AJNR Am J Neuroradiol 2015)

症状がなくても変性があるのはよくあること。つまり画像上の問題=症状とは限らないことを理解しておきましょう!

画像検査では変性の有無が分かるだけで、痛みの原因は画像には映らないことが多い

画像検査はいつ変形したのかまではわからない(昨日?数年前?)ので、昨日から痛みが出たからと言って変形が昨日起きたとは言えない

理学療法士による身体評価の重要性

臨床では症状と画像検査で診断名がつき、その後リハビリ処方が出ることが多い

画像での問題と症状は一致しないことも多いため診断名だけで判断せず、理学療法士による身体評価によって椎間関節、椎間板、筋筋膜、仙腸関節性の痛みかどうかを鑑別する必要がある

「MRIで椎間板が痛んでるから腰が痛いんですって医師に言われました」と患者さんが言うことも多いですが、背部の筋肉をマッサージ、ストレッチするだけで症状が変化することもあります。

腰痛の評価において重要なのは、診断名も考慮しつつ、患者の症状や痛みの原因をしっかりと把握することです。

評価から治療の流れ、問診項目などは次回以降に解説していきますね!

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